2010年4月28日水曜日
ピートとパパの会話(その97 音楽とアイデンティティ)
・・・・・・・・・・・黒服は武満徹・・・・琵琶の鶴田錦史
パパ 「しゃてと、今日は、音楽とアイデンティティについて話そう」
ピー 「アイデンティティ?」
パパ 「アイデンティティとは、心理学で自己同一性と言う意味らしい」
「だけど、これでは何のことかさっぱり分からん」
ピー 「分からん事を話すの?」
パパ 「その国の人達が、一様に持っている固有の深層意識と言うか、
同一性の文化ちゅーか、それがどのような形で音楽に反映され
ているのかを聴いてみようと」
ピー 「はーん、ナショナル・アイデンティティだね」「民族意識のような
ものか」「ほんで何なの?」
パパ 「いやさ、上海万博のテーマソングが岡本真夜の曲だったろう」
ピー 「あ~、おっ母が、上海パクリ博とか上海パク博とか言っていたね」
「岡本真夜は焼け太りだと悪口を言う人もいるみたい。へへ」
「でも、上海万博当局は、その後音信普通とか。パクリ天国、著作権
無視の中国らしいね~」「万博を開催するには数十年早い?・・」
パパ 「中国には、良い曲がいっぱいあるのに何故真似たのだろうと思う」
ピー 「そう言えばそうだね。支那の夜とか、上海の花売り娘とか」
パパ 「それは、日本人の曲! 西條八十と上原げんと,の作曲だよ」
「で、盗作と言われている件だが、中国は西洋的な近代様式に、
まだまだ慣れていないように思える」
ピー 「中国は、万国博という国際博覧会で、近代国家になったぞ、と世界
に見せ付ける必要があるのだろ?」「だから万博を開催するのじゃ
ないの?」「それがパクリ博? 分からんの~」
パパ 「だけど、頭の中が近代化に追い付いとらんから、今様の独自性を
表現した曲が出来ないんだなぁ」「かつて、日本もそうだった」
ピー 「それで、岡本真夜の曲を?」
パパ 「近代国家の文化様式を習得し、それを国民意識として先進国レベル
にまで高めるには、何十年という歳月が掛かる」
「それよりも、中国のナショナル・アイデンティティを前面に出す
方が、自然で良いと思うがねぇ」
「例えば、これなんか良いんじゃないかな~」
http://www.youtube.com/watch?v=gDVUOzTYDOQ&feature=related
「二胡なんかも中国のナショナル・アイデンティティだよ」
http://www.youtube.com/watch?v=6k-9qqKxcrA&feature=related
ピー 「お~、中国の音曲だ」
パパ 「国の文化によって、メロディも独特になるから面白い」
「それでさ~、何故民族によってメロディが異なるのかという疑問が
生じる・・」「で、少しだけその理由が分かった」
ピー 「何か民族の持つ根源的なものでも?」
パパ 「その国独特のメロディは、宗教にそのルーツがあるのかも知れない、
とパパは思っちょるのよ」「それでは、中東の一例を」
http://www.youtube.com/watch?v=F--JD9LGFQY&feature=related
「この聖なるコーランから中東独特の音曲が生まれた」
http://www.youtube.com/watch?v=ac8TgmYv_iQ&feature=related
ピー 「お~、これは明解だねぇ」「日本ではどうなの?」
パパ 「日本には二つの流れがある」「仏教と神道だ」
「では仏教の音曲から聴いてみよう。先ず御詠歌ね」
http://www.youtube.com/watch?v=f8QDKMqRA6E&feature=related
「これが民謡に繋がる。津軽あいや節を聴いてみよう」
http://www.youtube.com/watch?v=zUBFBOnqAPE&feature=related
「そして、演歌へと発展していく」
http://www.youtube.com/watch?v=ovxDu-TDyjE
ピー 「何かこじ付けじゃないの~」
パパ 「次に神道の音曲を聴いてみよう。古代の音色だよ」
http://www.youtube.com/watch?v=UnptWMKEA4I&feature=related
「この音曲様式が、祇園精舎、那須与一へと繋がる」
http://www.youtube.com/watch?v=xyUVT8sas6g
http://www.youtube.com/watch?v=1zsJXncKieg&feature=related
「近代に入って、宮城道夫が表現すると、こうなる」
http://www.youtube.com/watch?v=X0OYz3qz28A&feature=related
「そして、美空ひばりへ」
http://www.youtube.com/watch?v=83wt-YkKC9w
「この頃になると、仏教と神道の音曲が統一され、国民歌謡となる」
ピー 「こじ付けのこじ付けだなぁ」
パパ 「んでじゃ、この日本民族の神道音曲を現代音楽に取りいれた人
が、世界的に有名な武満徹という作曲家だ」
ピー 「ほう、現代音楽ね~」
パパ 「武満徹は貧乏でさ~、紙にピアノの鍵盤を描いて練習をして
いたんだ」「それを黛敏郎が見かねてピアノを贈ったのさ」
ピー 「ええっ? 紙の上でピアノを練習していた~?」
パパ 「それに10代の頃は、進駐軍キャンプで賄いをしながらジャズを
聴いていた」「この人は、中学を出て直ぐ働いたから、音楽は全て
独学で勉強したんだ」
ピー 「ほう、面白い作曲家だねぇ」
パパ 「この辺りは、池辺晋一郎の回顧談を読むと面白いよ」
ピー 「ほう、色んな音楽家と繋がりがあるんだ」
パパ 「武満徹は、ストラヴィンスキーに見出されたんだよん」
「では、武満徹のノヴェンバー・ステップスを聴いてみよう」
http://www.youtube.com/watch?v=I9BqooZOJnY
「この曲で琵琶を弾いているのが、鶴田錦史だ」
ピー 「写真の人だね」
パパ 「おじさんのようだけど、この人は女性なんだ」
「この曲は、死の音階を用いているねぇ」「夜の墓場でライブを
すれば、物凄い臨場感を演出できる」
ピー 「ゲゲゲの鬼太郎だ。気持ちわる」
パパ 「武満徹の音楽は、西洋と日本固有の神道的潜在意識の
融合だなぁ」
ピー 「どうして融合させたの?」
パパ 「武満は、西洋音楽嗜好だ」「だけど、西洋音楽の中に自分の
アイデンティティを見つけられなかったんだなぁ」
ピー 「つまり、西洋音楽は、西洋人の感性でしか表現できない困難さが
あるということ?」「技術的な問題では無さそうだね」
パパ 「そうなんだ。この民族固有の文化的感性は、生れ育った地で脳内に
インストールされるんだなぁ」「三つ子の魂百までだ」
「武満は、早くからその事に気付いていた、とパパは推測しちょる」
ピー 「それで、西洋音楽に琵琶や尺八の音色を取り入れ、日本人の感性を
表現した?」「そこにしか身の置き場がないんだなぁ」
パパ 「だけど、経験したことの無い和楽器の響きで攻められると、西洋人
はコロっと参るんだな~」
ピー 「ビートたけしがフランスで評価されるのも、そういう感覚?」
パパ 「フランス人はゲテモノ食いだ」「他の西洋諸国ではイマイチだよ」
「故岩城宏之という指揮者が、西洋の曲をやる時はビフテキを食う
と言っていた」
ピー 「ビフテキから西洋人固有の感覚を吸収し、指揮に生かすの?」
パパ 「本人は、そのつもりだと言っていた」「彼は武満が好きでさあ、
故武満徹の集大成をやると張り切っていたが、その彼も他界した」
ピー 「思い出したけど、以前のジャズシリーズ(その6)で秋吉敏子の
ことを話したろう。その時も似たような事を言ってたよね」
パパ 「さて、もう少し話を進めよう」
「黒人ジャズピアニストのバド・パウエルが作曲したテンパス・
フュージットを聴こう」「ラテン語で '時は過ぎ行く' という意」
http://www.youtube.com/watch?v=yrO45Tzvhxg
「更に、ビ・バップの大御所、チャーリー・パーカーのKoKo」
http://www.youtube.com/watch?v=i_ZajJd-1kY
ピー 「凄いね」
パパ 「この黒人の感性は、一体どこから生まれるのだろうね?」
ピー 「抑圧に対する反動かなぁ?」
パパ 「ロシアの作曲家は、広大な地平線を表すような壮大さと、ジプシー
の持つ物悲しさを同時に表現しているように感じるよ」
(ラフマニノフ ピアノ協奏曲第二番)
http://www.youtube.com/watch?v=GXt_h1k5ddA&feature=related
(チャイコフスキー ピアノ協奏曲第一番)
http://www.youtube.com/user/ValentinaLisitsa#p/u/99/u62s3BYpOfk
ピー 「ロシアの広大な自然から受ける感性だ」
パパ 「でも、ロシアから離れると、曲も都会人好みに洗練され、情緒的な
作風になる」
(ショパン ピアノ協奏曲第一番)
http://www.youtube.com/watch?v=nBGbRbUwcnI&feature=related
「では、東ヨーロッパの哀愁を聴いてみよう」
(ドヴォルザーク スラブ舞曲第二集72-2)
http://www.youtube.com/watch?v=faPf92gsGgo
ピー 「チェコ国民学派だね」
「いろいろ聴いたけど、民族固有の音色ってものがあるのか~」
「これは、標題音楽としての聴き方だねぇ」
パパ 「その固有の音色が何に基づいているのか?、どこから来るのか?」
「精神の感性・感受性は、何に影響されるのか?」
「自然か、宗教か、土着の文化か、古代の文明か、興味津々考え中」
ピー 「ヨーロッパはネアンデルタール人やクロマニヨン人の生活まで
遡り、北東アジアは北京原人、南方はジャワ原人まで遡って
考察する必要があるよ」
パパ 「遡りすぎだ」
「最後に、音楽と共に八ヶ岳の風景を楽しもう」
http://www.youtube.com/watch?v=v7Ca8tBgBHQ&feature=related
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