2012年2月24日金曜日

ピートとパパの会話(その137 "MICHIKO LONDON")


(Ikapa Livea より michiko london fashionPrize)

パパ 「今日は、コシノ三姉妹の話題からだよん」
ピー  「あれ、jazzの聴き方じゃなかった?」
パパ 「それは次回にしよう」
ピー  「んで、コシノ三姉妹ちゅーのは、デザイナーのかい?」
パパ 「そ、NHKの朝ドラ、カーネーションに出てくる人達だ」
    「このドラマの見方は、大略して2通りあるんだ」
ピー  「ほう?」
パパ 「一つは岸和田の人情劇、もう一つはビジネスモデルとしての
    見方だ」「ワシはビジネスモデルとして見ちょる」
ピー  「ビジネスモデル?」
パパ 「んだ。結果が分かっているので、安心して見ていられる」
ピー  「ま~た、変な見方をしているのとちゃうかい?」
パパ 「ちゃう。ワシの見方は一種の職業病だね」「現役時代は、
    ビジネスの分析と合理化、制度構築ばかりやってきたかんね」
ピー  「前口上が長いな~」

パパ 「ほんでだ、ドラマでオハラ洋装店のお母ちゃん、糸子が仕事に
    限界を感じ始めるが、何故だと思う?」
ピー  「歳かな?」
パパ 「ちゃう! 岸和田という土地にしがみ付いているからだ」
    「オハラ洋装店は、岸和田町内の雰囲気以上には発展しない」
    「これは、お母ちゃんの父親も同じ状況じゃった」
ピー  「ん? それこそ何故なん?」
パパ 「ほほ、岸和田には、人・物・金が集中しないからだよん」
    「発展には、条件が必要なのじゃよん。大都市のように」
    「ただ、世の中の動きを早く取り入れることで、小規模ながら
    商売は続けられる。地域密着型ビジネスは、そこが重要!」
ピー  「アッパッパだけの商売では、何れ限界が来るということか・・」

パパ 「先ず限界に達したのが、父親の従来型商売」
    「そこへお母ちゃんが、洋裁という世の中の動きをいち早く
    取り入れて、店を大きくしたのさ」
ピー  「ほほう、時代の先取りだねぇ」
パパ 「そうなんじゃ。だけど岸和田の中に居ると、時代の変化が
    見えないから次第に取り残される」
    「岸和田で儲けられるのは、商売が同一土壌にある時だけだ」
ピー  「ドラマでは、そこをコシノ家の人々の世代交代として
    描いているよ?」
パパ 「だから2通りの見方が出来るんじゃわさ」
ピー  「つまり、岸和田の人情劇とビジネスモデルということかな」

パパ 「ここで、コシノ三姉妹の各々の特徴を見てみよう」
    「先ず長女、この人は時代の波に上手く乗ってビジネスを
    成功さすタイプ」
ピー  「次女は?」
パパ 「個性丸出しで自分本位。モードの先端を行くんだが、その分
    時代に先んじているから、世間の理解を得難い」
    「ま、ゴッホの絵のような感じだね」
ピー  「だからパリへ行くのかぁ」
パパ 「三女はアホぶってはいるが、母親と姉二人を見て育つから、
    抜け目がない」
ピー  「ドラマとしては、三女の展開が楽しみだねぇ」
パパ 「さてここで、母親と三姉妹に共通したところがあるのだが」
ピー  「なんだろう?」
パパ 「何れも外国の影響を受け、その真似から始めたということじゃよ」
    「それが、戦後の高度成長期と重なり、ビジネス戦略としての
    価値を持つに至った。今の中国と同じだね」
ピー  「はぁ・・・」

パパ 「けれども、コシノ三姉妹が猿真似で終わらないところが、
    ビジネスモデルとしての見所かな」
ピー  「猿真似とは、おフランスの真似だね」
パパ 「そう、真似だけでは母親と同じ道を辿り、何れ行き詰る」
    「何故なら、プレタポルテの時代に突入するからね」
    「これが時代の変化なのさ」
ピー  「なるほど~、大量消費の時代を迎える訳か~」
    「だからドラマの中で、岸和田の'北村' がプレタポルテのことを
    言い出したのかぁ。ふむふむ」
パパ 「そうだよ~ん。大資本がパリのデザイナーと契約し、プロダクト
    ラインで大量に生産を始める」
    「岸和田の洋装店では太刀打ち出来ないわな」

ピー  「はっは~ん。三姉妹が自分のブランドを立ち上げる理由は、
    そこにあるのか~・・・」
パパ 「そこが、コシノ三姉妹が只者ではないところじゃよ」
    「これは、お母ちゃんの教育の賜物だ」
ピー  「それに、自分のブランドちゅーのは、まだまだ日本で認知され
    なかった時代だろ? パリ偏重で」
パパ 「そやさかい、ヨーロッパで立ち上げる必要があった」
    「しかも、成功すれば世界から注目される」
ピー  「アジアの田舎では駄目なんだね」
パパ 「三女は、60年代のミニスカートに目をつけ、
    その後 MICHIKO LONDON というブランドを立ち上げる」
    「カーネーション、ますます面白くなるぞ。イヒヒ」

2012年2月5日日曜日

ピートとパパの会話(その136 "Cool Jazzの位置?")



パパ 「今日は、以前より気になっていたCOOL JAZZの話題だよ」
ピー  「マイルス・デイビスの話題の時、色々言っていたね」
パパ 「COOL JAZZの位置付けなんだが、どうも気になる」
ピー  「気になるとは?」
パパ 「JAZZ史全体から考察しても、どうも影が薄いんだなぁ」

    「先ず、ジャズ・ショコラで軽快に飛ばして行こう」
             ↓
http://www.youtube.com/watch?v=pwkwc8hnvEY&feature=related

ピー  「松下奈緒だ!」
パパ 「ジャズをサラッと弾いてのける技量が凄い」
    「ベースは、ワシお気に入りの池田達也だよん」

ピー  「ほんで、COOL JAZZとは涼しい時のJAZZ?」
    「それとも虚無的なJAZZ?」
パパ 「COOLとは、カッコイイとかイケてる、という意味を表す時の
    形容詞と理解すべきじゃよ」
ピー  「ほう?」
パパ 「大体やね、中学校で習う英語がおかしい。受験英語なら、
    涼しい・寒いという直訳でエエが、JAZZを形容するなら、
    カッコイイという日常会話的でなければならん」
ピー  「中学の先生に責任があるの?」
パパ 「例えば、ある大学の政治学科では、フラッパーやボブカット
    という米国発の風俗も教えると言ったろう」
ピー  「へいへい」
パパ 「日本も受験英語だけではなく、そういう社会的な意味合いを
    持つ内容を、英語教育の中に取り入れるべきだ」

ピー  「それは分かったけど、ほんで何がどないなん?」
パパ 「COOL JAZZは、マイルスとビ-バップとの関係だと思うんだ」
    「マイルスは、自分が育った生活環境とビーバップが合わないと
    感じていた」
ピー  「以前、パパがマイルスの考察の中で言っていたことだね」
パパ 「そう、だけどマイルスは、ジャズをビーバップで習得した
    という事実がある。そこを考えねばならんのじゃよ」
ピー  「ほら始まった」

パパ 「ビーバップの元祖は、チャーリー・パーカーやディジー・
    ガレスビー達だ」
    「一本立ちするには、彼らの呪縛から逃れる必要があると、
    マイルスは考えた筈だ」
ピー  「は~、マイルスの性格からして、考えそうなことだなぁ」
パパ 「そこで思いついたのがCOOL、つまり'カッコイイ' という形容だ」
    「これなら移り気な世間に、幅広く打って出ることも可能だと」
ピー  「カッコイイかぁ。いかにもマイルス的表現だね」
パパ 「だから躍動感を抑制し、メロディを重視する都会的な格好良さを
    追求することにしたのさ」
ピー  「するとCOOL JAZZは、マイルスの個人的な思惑から作られた
    もので、JAZZの持つ社会的な歴史観とは違うということ?」
パパ 「だから長続きはしなかったのさ」
    「それに、JAZZの歴史的視点から言っても、ビーバップのような
    革命的転換点になったとは言い難い」
ピー  「そやさかい、影が薄い?」
パパ 「では、'COOLの誕生' をちょこっと聴いてみよう」
              ↓
http://www.youtube.com/watch?v=8pOvhv78Clk

ピー  「なにやらビッグバンドのようだね」
パパ 「'COOLの誕生' により、JAZZはビーバップのような黒人の解放感
    のみを強調した騒がしいものでは無くなった」
    「ここに、JAZZが白人にも浸透し易くなった理由を感じる」
ピー  「なるほど~、白人の好みは、スウィング系統だもんね」
    「当時の白人達に、解放感は必要ないんだ」
パパ 「じゃが、結局マイルスは、チャーリー・パーカーから逃れ
    られても、ビーバップの呪縛からは逃れられなかった、と
    ワシは考えちょるのよん」
ピー  「話がおかしいじゃんか?」



パパ 「ほんじゃ、死刑台のエレベーターから '高速道路のスリル’を
    聴いてみよう」
              ↓
http://www.youtube.com/watch?v=nyucQIWrs1g

ピー  「はは~、ビーバップの曲 'koko' に似ているね」
パパ 「そうじゃ、マイルスの感性は、ビーバップがその根底にある」
ピー  「パパの言っている意味合いが、次第に分かってきたばい」
パパ 「マイルスと言えども、結局はビーバップの亜流に過ぎない」
    「ビーバップとは、それほど凄いJAZZの形態なのさ」

ピー  「HOT JAZZってーのは?」
パパ 「それは、誰かが作り出した造語だと思っている」
    「何故なら、COOL JAZZが世に出て、相当年月を経てから言い出した
    のがHOT JAZZで、ビーバップのように以前からあった訳ではない」
ピー  「ほと、JAZZの歴史を語る上で、対意というか、反意語的に誰かが
    言い出したの?」
パパ 「言い出したのは、日本人かな?。用語の使い方も変だしぃ~」
    「中学校で習うCOOLの反意語はWARMだし、HOTの反意語は
    COLDだしね」
    「まぁ、HOTを'激しい' という形容詞で表現すれば、意味が通じない
    ことはないが~・・・」
ピー  「COOL,HOTの日本語訳が間違っているのだよぉ~」
パパ 「JAZZの歴史的名称表現から言っても、HOTは如何にも後から取って
    付けた対意語だと感じるなぁ」
    「HOT JAZZが、基本的にビーバップのことを指しているのも、
    そういう理由からだよ」
ピー  「ちゅーことは、元々HOT JAZZという系統的実態は無いんだね」
パパ 「そう、誰かがJAZZの意味合いを知らずに、後から言い出したことだ」

ピー  「パパは、どうしてJAZZが好きなん?」
パパ 「好きではない。ワシは、何故米国だけにJAZZという音楽形態が発生
    したのかに関心がある」
    「つまり、JAZZという音楽を社会科学の範疇として捉えているのさ」
    「すると、マイルスの心境まで理解し得るんだよん。社会的にね」
ピー  「は~ん、そこが面白いのかぁ」
パパ 「JAZZという音楽が本当に好きな人々は、米国社会の成り立ちには
    あまり関心を示さない」
    「そういう人達の興味は、誰が何処で誰と何を演奏したか、なのさ」
ピー  「ほう、最初にJAZZありきなんだね。これは観点の相違だな~」

パパ 「さて、次回は、ワシの最も好むJAZZの聴き方を披露しよう」
    「社会科学ではなく、時代感覚的にね」
ピー  「ま~た、怪しげな聴き方じゃないの~」