2011年9月19日月曜日

ピートとパパの会話(その130 映像と音楽(1))

ピー  「今日は、なんの話?」
パパ 「映像や音楽から何が読取れるか、という話をしよう」
ピー  「ややこしい話は否だからね」
パパ 「ここでは、人種固有の文化が融合し、新しい音楽を生み出して
    いった米国社会の背景と、その影響について考えてみよう」
ピー  「つまりは、その頃の映像や音楽の話かい?」
パパ 「まず、この映像から見てみよう」
    「ノーマン・グランツという人が、1944年に制作した
     JAMMIN' THE BLUESという題名の映画で、当時のジャムセッション
    を描いた作品だ」



ピー  「50年以上前の映画だね。この映像から何を読取るの?」
パパ 「色々ある。この映画が制作された1944年は、チャーリー・パーカー
    やディジー・ガレスビーによるビーバップが出現するほん直前だ」
    「まずは、そういうジャズ変革期の歴史を認識してと!」
ピー  「それで?」
パパ 「この短編映画の音楽は、Midnight Symphony、On the Sunny Side
    of the Street、Jammin' the Bluesの3部構成になっている」
ピー  「一粒で3度美味しい映画かぁ」
パパ 「ジャムセッションだから、Midnight SymphonyとJammin' the Blues
    では、ソロ演奏によるアドリブを披露している」
ピー  「なるほど、これがビーバップの基になる訳だね」
パパ 「また、Jammin' the Bluesは、演奏形態の中にニューオリンズジャズ
    やデキシーランドジャズの名残りを見て取れる」
ピー  「して、ニューオリンズとデキシーの違いは?」
パパ 「超々簡単に言うと、ニューオリンズジャズはアフロアメリカン(アフリ
    カ系米国人=黒人)の演奏で、デキシーランドジャズはユーロアメリカ
    ン(白人)の演奏を指す」
    「黒人対白人という米国社会の構図を映したものだ。当時は一緒に
    演奏するということが無かった」
ピー  「簡単すぎる説明だなぁ」
パパ 「中身は時代的にほぼ同じで、どちらもシンコペーションのリズムを
    強調した形態だ」
ピー  「ほと、ベースとラッパのおっさんのデキシー風カンカン帽は、白人の
    影響かな?」
パパ 「このジャムセッションは、若干楽器が異なるものの、管楽器は3管
    編成だし、リズムセクションを含め、ニューオリンズジャズの基本
    スタイルを踏襲したものと言える」
    「テナーサックスの一人は、有名なレスター・ヤングなんだ」
ピー  「ほう」
パパ 「それと、ソロの回しは、ルイ・アームストロングの演奏スタイルで、
    初期のアンサンブル主体のジャズよりも遥かに進化している」
ピー  「でも、管楽器がやけにうるさいな~」
パパ 「管楽器がうるさいのは、デキシーやニューオリンズの名残りなのさ」
    「だけど、曲風はビーバップになる直前のスウィング感溢れるものだ
    し、ジャズの革命前夜における緊迫した演奏が伝わってくる」
ピー  「うん? スウィングの衰退が始まるの?」
パパ 「秋吉敏子流に言えば、下に潜ったスウィング感になる」
パパ 「この映画は、ビーバップまでのジャズの歴史の集大成だね」
    「そこに、1944年制作というこの映画の意味合いがある。と思う」

ピー  「映像の続きだけど、珍しくギターが出てくるね」
パパ 「このジャムセッションで唯一の白人、バーニー・ケッセルだ」
ピー  「うん? どうして白人が混ざっているの?」
パパ 「それは~、音楽プロデューサーであるノーマン・グランツの好みだ」
    「彼は、ユダヤ商法の持主だから、人種なんてどうでもいいんだ」
ピー  「ほう、要は実力と利益の問題なんだなぁ」
パパ 「バーニー・ケッセルの作品は ’On Fire’が有名だ。ワシもCDを
    持っちょる」   

ピー  「2番目のOn the Sunny Side of the Streetはどうなのさ?」
パパ 「この曲のボーカルは、マリー・ブライアントだ。この人はダンサーの
    筈なんだが?」
    「それと、この時代にしては珍しくクラシック・ブルーススタイルで
    歌っている。これが何とも言えない良か雰囲気を醸し出している」
ピー  「クラシック・ブルース?」
パパ 「細かく説明すると大変だが、これは1930年頃の女性ボーカル
    スタイルで、単にジャズバンドをバックに歌う形式をいう」
    「これもノーマン・グランツの趣味かも知れないよ」
ピー  「わざわざクラシック・ブルースを映像化したのは、何か理由があり
    そうだなぁ」
パパ 「黒人社会の歴史的背景を知らねば、この雰囲気を理解するのは
    難しい」
ピー  「映像から色々なことが読取れるんだねぇ」
    「まるで時代考証だ」
パパ 「でさ、マリー・ブライアントのヘアースタイルに注目してみよう」
    「これは、サザエさんだ」
ピー  「長谷川町子は、マリー・ブライアントのヘアーを真似たのか知らん?」
    「ところで、Jammin' the Bluesに合わせて踊っているのは、この人?」
パパ 「そう、パートナーは、アーチー・サベージというダンサーだよん」
    「踊っているダンスは、リンディ・ホップだ」
ピー  「ダイナミックな踊りだねぇ」
パパ 「この映像をジルバだと言う人もいるが、まだまだチャールストンの
    ステップが残っており、これは明らかにリンディ・ホップだ」

ピー  「リンディ・ホップって、以前、話していなかった?」
パパ 「そう、これね

    「続きに元祖リンディ・ホップの映像を見てみよう」
    「世界でいっちゃん最初に公開された映像だ。↓」



    「ノーマン・グランツは、この映像を意識しながらJAMMIN' THE BLUES
    の映画を制作したと、ワシは思っているのよん」
ピー  「黒人男女が、無茶苦茶に動き回っている映像にしか見えないよ」
    「それより、最初のジャムセッションらしき演奏がいい」
パパ 「この後、リンディ・ホップは、白人によって次第にマイルドなダンス
    へと変化して行くんだ」
ピー  「チャールストンはどうなのよ?」
パパ 「下にチャールストンの映像を載せておくから参考にするといいよ」
    「これは、1920年頃のステップを再現したものだ」



    「んで、このチャールストンが、とんでもないものに影響を与えたんだ」
    「次回は、ワシの独断と偏見で、その影響について話そう」
ピー  「変な展開になりそうな予感がする。やだな」

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