2011年9月23日金曜日

ピートとパパの会話(その132 映像と音楽(3))



パパ 「今日も前回の続きだよん」
ピー  「この前は、ロックンロールとロカビリーの違いを話したね」
パパ 「そう、その続きだ」「今日は、リトル・リチャードの
    トゥッティ・フルッティ(Tutti-Frutti)という曲から始めよう」
    「当然ロックンロールじゃけんね」



ピー  「喧しいなぁ。前回の’のっぽのサリー’と同じじゃんか」
パパ 「エルビスがやると、こうなる ↓」



ピー  「これは~、ロカビリーだね」
パパ 「そう、ベースはスラッピング奏法だし、エルビスはヒーカップに
    マンブリング唱法っぽい。ヒルビリーの延長線上だ」
ピー  「ほほう、ロカビリーの三大特徴だね」
    「ところでトゥッティ・フルッティって、何?」
パパ 「果物の味がするガムらしいが、関係不明」
ピー  「ところでさ、二人とも歌の中で’ル・バッパ・ワッパッパ’、
    なんて意味不明な事を口走っているけど・・・」
    「これって、ドゥーワップ (doo-wop)?」
パパ 「ちゃう!」
    「正調ドゥーワップは、これだ ↓」



ピー  「ほえ? ムード歌謡じゃんか?」
パパ 「前川兄いのバックで、ああああ~♪うう~♪るるっる、る~♪
    とか歌っているコーラスが、ドゥーワップなんだよん」
ピー  「ほっ?」
パパ 「ドゥーワップは、1950年代のコーラスグループに取り入れられ、
    主旋律を歌うボーカルを盛り立てる役目をしたんだ」
    「この歌唱は、ゴスペルとジャズの融合でおわす」
ピー  「クールファイブとの関係は?」
パパ 「単にドゥーワップのコーラススタイルを取り入れただけさ」
    「他にマヒナスターズや東京ロマンチカもそうだよん」
ピー  「ドゥーワップは、米国発かぁ」
パパ 「アメリカでは、オンリー・ユーを歌ったプラターズが有名だよ」
ピー  「日本でも流行ったよ。おいらは’16トン’が好きだな」



パパ 「ざ~っと話してきたけど、POPSやロックを遡って行くと、
    ジャズを通過して西アフリカのイボ族の音頭と欧州の民謡に
    到達する」
ピー  「面白いね。二つの流れが米国で統一されてジャズやロカビリー
    になり、そして、再び分散して行くんだねぇ」
パパ 「アメリカ音楽の系統樹を探れば、ユーロアメリカンやアフロ
    アメリカン、更にはクレオール等の音楽が融合し、ジャズ、
    ROCK、POPS等へと発展して行った過程がよく分かる」
ピー  「アメリカならではの融合と分散だ」

パパ 「だけどねぇ、R&Bやジャズってーのは、白人に対する黒人の
    カウンター・カルチャーだなぁ」
ピー  「対抗文化って訳?」
パパ 「例えば、リトル・リチャードの’ノッポのサリー’は、
    パット・ブーンに真似されないようにと、非常な早口で
    怒鳴りまくるように歌う曲として作られたんだ」
ピー  「はは~ん、こういう曲でパットブーンのノリが悪いのは、
    そういう理由かぁ」
パパ 「そいうこと。じゃが、ヤンチャ坊主のプレスリーは違った」
ピー  「悲しいかな、彼らの持つ音楽的独創性を白人に搾取され
    たんだなぁ」
パパ 「だから、黒人の音楽を理解するには、合衆国の歴史を知らねば
    ならないのさ」
ピー  「それで、ジム・クロウ法がどうとか言うのかい?」
パパ 「音楽は人文科学だと言われるが、ことアメリカ発の音楽に
    関しては、社会科学としての認識も必要だ」
ピー  「どうして?」
パパ 「何故なら、アメリカ社会の矛盾が、ジャズを始めとする独自の
    音楽を発展させる原動力になったからさ」
    「そこに、認識すべきアメリカ音楽の本質がある」

ピー  「社会的矛盾がもたらしたアメリカ音楽の発展と融合ねぇ」
    「本質の論理的解釈は?」
パパ 「黒人音楽の発展過程とその融合は、弁証法的な解釈で、
    その本質を認識し得る」
    「対立と闘争、そして、矛盾の統一だ」
ピー  「対立と闘争ってのは、黒人と白人の関係だね」
    「矛盾の統一とは、融合を指すんだね」
    「 Rock'n Roll + Hillbilly = Rock-A-Billy ちゅーことか」

パパ 「しかしそれは、’新世界’というアメリカだからこそ、音楽の
    融合が起こり得た、という事実を見逃してはならない」
    「また、互いに影響を受けたのでは無く、文化の対立と闘争を経て、
    まったく新しいものが興ったと考えた方がいい」
ピー  「パパ特有の歴史観? 或いは唯物史観?」
パパ 「アメリカは、自由を求めた清教徒が一から作った国だ」
    「社会の形成期に、伝統的な思想や観念に縛られることがなかった
    から、異文化同士の融合が起こり得たと考えられる」
ピー  「自由の精神かぁ。だから、R&B,ジャズ,ロック系統は、ヨーロッパ
    では興らなかったのか」
    「新世界音楽と定義付ければ良いのかも知れないね」
パパ 「そして、西アフリカのイボ族の音頭が、アメリカでの文化的融合
    を経て、世界に影響を及ぼし、遂にはジュリアード音楽院で教え
    られるようにもなった」
ピー  「ほっほう! 壮大な航海だ~」
パパ 「ここに、アメリカ合衆国という国の精神があると思わないかい?」

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