2010年5月27日木曜日
ピートとパパの会話(その102 明るい農村Ⅱ)
パパ 「前回、農業をしてみたいと言っていたね」
ピー 「ま、漠然とね。純粋に農業と言う訳じゃなくて、
田舎暮らしもいいかな、と」
パパ 「では、’新日本紀行’から農村風景をイメージして見よう」
http://www.youtube.com/watch?v=M7HSlonmILg&feature=related
パパ 「して、浮かんだイメージはどうかな?」
ピー 「なんともはや、古き良き日本の風景を醸し出しているメロディー
でやんすな」
パパ 「もう一つ、’昼のいこい’のメロディーから農村社会をイメージ
して見よう」
http://www.youtube.com/watch?v=sLhM5AUUET4&feature=related
ピー 「の~んびりして、駅の時刻表は、普通電車が3時間に一本という
感じだねぇ」
パパ 「ビジネスのスピードが、田舎は3時間単位、都会は30秒単位だ」
ピー 「電車の時間間隔と、その地域の経済速度は比例するの?」
パパ 「そ、田舎は3時間でビジネスの方向性を出せば良いが、都会は30秒
で結論を求められる」
ピー 「都会はせわしないね~。慌てる乞食は貰いが少ないよ」
パパ 「駅へ行って時刻表を見れば、その地域のビジネス速度が凡そ
把握出来るのじゃよ。これビジネス交渉の裏技ね。はは」
ピー 「時々けったいなことを言うね」
パパ 「で、農村社会のイメージは、この映像から読み取れたかい?」
ピー 「共同作業が多い映像だね~」
「何かしら封建的なイメージで、付き合いが大変そうだな~・・」
「でも空気は美味しそうだ・・・」
パパ 「その印象からすると、ピートは農村生活に向かないなぁ」
ピー 「なんで? 同じ日本じゃんかぁ」
パパ 「ピートが、農村は封建的だという印象を持ったからさ」
ピー 「ん? 少なくとも民主的な社会形態じゃないよね?」
パパ 「どうしてそんな事が分かるの? それは観念として思っている
だけだろう?」
ピー 「都会ではそう言うじゃん。それ以上の事は想像でけへんし~」
パパ 「では、水田耕作中心の農村社会について、ぼちぼち話そうか」
「まんずは、農村が封建的だと言う誤った考え方じゃが~」
ピー 「誤ってる?」
パパ 「これは、農村社会の物事の決め方を具体的に話さないと、理解
出来ないだろうねぇ」
ピー 「例えば?」
パパ 「農村では、年間行事を例年どおりのやり方で行っていれば、先ず
問題は出ない」「出るとすれば、何かの都合でやり方についての
意見が食い違った場合だね」
ピー 「都会じゃ、多数決だなぁ」
パパ 「農村は、田圃と水が命の運命共同体だ」「田圃の事がうまく行か
ねば、村落の死を意味する。争いごとは絶対避けねばならない」
「そこで、全員が何とか納得出来るようにする。そこがポイントだ」
ピー 「どうするのさ?」
パパ 「寄り集まって、双方の意見を出来る限り述べさせる」
「何時間か経過すると、そのうち意見が堂々巡りを始める」
ピー 「ほほう」
パパ 「そこへ、誰かがすかさず間に入り、長老に意見を仰ぐ」
「若いもんはこない言うてござるが、どないですやろ? とね」
「このようなやり取りが、極自然に行われる」
ピー 「長老は、多数決で賛否を取るんだろ?」
パパ 「それは都会だ。農村では、そんな下手糞なやり方はしない」
「長老は、あくまで参考意見を述べるだけだよん」
ピー 「ふ~ん、結論を出さないんだね」
パパ 「長老は、’前はこうしたし、あそこの村はこうやってうまく
いった。だからこうすれば良いのじゃないかい’、とたしなめる
ように言う。けして押付けない」「で、皆さんそれで何とか納得
する」「結局、従来どおりの方法で落着くのさ」
ピー 「よく納得するね。都会じゃ無理だな、訴訟も辞さない」
パパ 「運命共同体だからさ。地域の目的が明確だし、だから纏まる」
「それに長老は経験豊富だから、任せても安心できるというもの」
ピー 「経験済みの従来方法が、一番安全策だと言う訳だね」
「だから皆さん従うのかぁ」
パパ 「農村は、目的がバラバラな都会のモザイク社会とは違う」
「都会じゃ少数意見は無視される」
「都会人は、それを民主主義と呼ぶ」
ピー 「は~ん、田舎の寄り合いの方が、民主的な決定方法という
訳かぁ」 「直接民主制のようだね」
パパ 「そうだよん。議会制民主主義ちゅーと、一見合理的に思えるが、
少数意見は反映され難いという欠点を持つ」
ピー 「なるほど。社会の成り立ちが異なると言う事か」
パパ 「田舎は、田圃を守って行く共同体だから、答えは一つしかない」
「それは、昔ながらの方法かどうかだ」
ピー 「長老は、それを心得ているのか。だから、皆さん納得するんだね」
パパ 「んだ、農村が封建的だというのは間違いで、農村を支配しようと
する外部の勢力が、封建的体制を押付けているに過ぎない」
ピー 「ほ~ん、そいう考え方か~」「農村を支配する外部勢力とは?」
パパ 「昔で言うなら、武士階級の封建家臣団だね」
「その時のイメージが、未だに農村は封建的だと言われる所以だと
考えているんだ」「確かに時代と合わない部分もあるがね」
ピー 「すると、農村の良さは、運命共同体という社会組織にあるので
あって、 自然や風景では無いということかな?」
パパ 「パパは、そうだと思っている。自然は三日で飽きる」
ピー 「ダム問題や合併問題で、村が割れている状況もあるらしいけど?」
パパ 「そういう問題は、大抵利権が絡んでいるから収拾がつかなくなる」
「この種の問題の殆どは、外部から持ち込まれるんだ」
ピー 「年間行事どおりの事をしていれば、田舎で問題なんて起きない?」
「すると、都会人のために田舎が迷惑しているのかぁ」
パパ 「不必要なダムを造る、ゴミ焼却施設や処分場を造る、BBQの後始末
をしない、大声で騒ぐ、これらは全部都会人が持ち込んでくる」
ピー 「都会が田舎に干渉しなければ、明るい農村そのものなんだなぁ」
「じゃけん、宮沢賢治は、農村に魅せられたのかぁ」
パパ 「さて、農村移住を想定して、もう少し具体的に話そうか」
ピー 「おいら、住めるかな~」
パパ 「ある都会人が、退職後に農村へ移住して自治会に入った」
「その途端、名も知らない人の葬式に三日間付き合わされて 閉口し、
即、自治会から脱退した」
ピー 「葬式が三日間? 凄いね。都会じゃ考えられない。それに、
葬儀は 専門の会社に頼むのが常識になっている」
パパ 「田舎に住むんだろ?」
「都会の常識、田舎の非常識だ」「それが軋轢を生む原因だよ」
ピー 「あ~、そうか!」
パパ 「運命共同体では、三日間の葬式なんて極当たり前なのさ~」
「都会の町内会と同じように考えるから、大変だと思うんだよ」
「それに、葬儀会社に頼んだりすれば、物凄い非難をされる」
ピー 「葬儀会社に頼む方が、簡単でいいじゃん?」
パパ 「田舎の葬式は、当家の親戚が集まって、飾り物を全て手作りする」
「手作りをして亡き人を偲ぶのさ。そして、それを礼節だと考える」
ピー 「ほえ~!」「香典なんかどうなっているの?」
パパ 「香典を幾らにするかは、その家の過去帳を見て決めるのさ」
「過去帳には、10銭とか25銭とか昔に貰った香典の額が載っている」
「それを目安に額を決める」
ピー 「農村のデータベースだね」「しかし、10銭とか25銭とか、どのよう
に現代の価値に換算するの?」
パパ 「それが、実に合理的な換算方法を取っている」
「その時代の米の値段に換算して額を算出するのさ」
「例えば、当時10銭相当の米の量が、現代なら幾らの値段に
なるのかを見積る」
ピー 「なんと~、そういう換算をするのか。凄いね」
パパ 「農村に入るには、その辺から勉強しないと駄目だね~。ふふ」
「誰も教えてくれないぞ~」
「付合いが大変だと言うのは、そう言う事さ」
ピー 「色々ありそうだな~」
パパ 「それと、農村のお寺さんは、運命共同体の葬祭を執り行うから、
敬意を払わねばならない存在なんだ」
ピー 「どのように?」
パパ 「先ず、お寺さんに電話で頼みごとをするのは、失礼にあたる」
「直接訪問して敬意を表し、そして依頼事を話すのが礼儀なんだ」
ピー 「そうかも知れないけど、都会じゃ電話だけだねぇ」
「他には?」
パパ 「例えば、都会のお坊さんは自ら自動車を運転して葬儀に出向くが、
農村では送迎をせねばならない」「たとえ100mの距離でもだ」
ピー 「なんとま、歩いたほうが早い距離だ」
パパ 「それも、自動車を門前の右に着けるか左に着けるか、な~んて事
も問題にな~る」
ピー 「左右どちらでも大差ないじゃん?」
パパ 「いやいや、敬意を払わねばならないから、問題になるのでござる」
「実際、毎回この件で1時間以上の論議になるのが普通だ」
ピー 「町の感覚じゃ~、信じられないなぁ」
パパ 「ここでも、最終的に長老が意見を述べて収まる」
ピー 「おいら、やっぱり農村には住めないなぁ」
パパ 「それはね、地域住民と運命を共にしちょらんから、そう思うんだ」
「農村に住むには、同じように農業をやり、村の政(まつりごと)にも
関わる必要がある。そうすれば、何故そうなのかを理解し得る」
「それまでは、ただの入り人だ」
パパ 「更に農村では、青年団が大きな役割を果たしているのじゃよ」
ピー 「青年団?」
パパ 「都会では廃れてしもうたが、農村では祭事を行う場合は必ず青年団
が前面に出る」「青年団が動かないと何も出来ないくらいなんだ」
「この組織も合理的に出来ちょるから、都会も参考にした方が良い」
ピー 「本当かい?」
パパ 「青年団の組織じゃが~、加入期間は30歳までで、その後は顧問の
ような立場になる」「つまり、30歳で祭りごとから身を引き、実務
や運用面を若者に譲るのさ」「そして、聞かれれば相談に乗る」
ピー 「常に組織の人員が更新されるようになっているのかぁ」
「昨今の老害政治とはどえらい違いだねぇ」
パパ 「それに、利害関係が無いから勢力争いをする必要も無い」
「また、青年団のお兄さん達は、若年層の教育係りも務める」
「それによって、村の伝統や祭事が伝承されて行くのさ」
ピー 「理想的な社会システムだねぇ」「共同体を維持していくヒエラルキー
構造が出来上がっている」「都会も見習えば良いのに」
パパ 「都会は生活様式が一様でないし、個人主義的だから無理だね」
「しかし、農村も都会の経済が入り込み、次第に変わって来たがね」
「ま、都会の非合理的社会と、農村の合理的社会との融合も必要だ」
ピー 「ん?、都会が非合理的?」
パパ 「農村は、経済にしろ生活にしろ無駄が無い。都会は無駄が
多すぎる」 「但し、都会は便利だし、何でも揃っている」
ピー 「う~ん、スーパーも病院も近くにあるしねぇ。交通も便利だ」
パパ 「そういう意味からは、後期高齢者になれば都会生活の方が
良いかも」
ピー 「そうか~、若い頃は農村に住み、歳を取ってから都会に住むという
方法もあるねぇ」
パパ 「そうだよん。人生は多様だ」
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