2010年5月20日木曜日

ピートとパパの会話(その101 明るい農村Ⅰ)


パパ 「新聞に気になる記事が出ていたな~」
ピー  「最近は気になる記事ばかりだよ。それで?」
パパ 「就農人口290万人のうち、65歳以上が60%を占めているとか」
    「この290万人は、殆どが専業農家らしい。総数では780万人位かな」
ピー  「290万人と言うと、1960年当時の専業就農人口の2割だね」
パパ 「よく知っているね。問題は、現在65歳以上の人が今後10年間で
    離農して行くと言うことらしい」
ピー  「農業の現状からして、新規就農者は極僅かだろうしね」
パパ 「単純計算では、10年後の就農人口が110万人位になっちゃう」
    「政府は、食料自給率60%を目標にすると言っているが~・・さて?」
ピー  「カロリーベースで60%だろ。パパが(その18)で、カロリー値を
    後進国並に下げれば、食料自給率はもう少し上がると言っていたね」
パパ 「で、10年以内に新規就農者を増やさないと駄目なんだけどな~」
ピー  「鳩やん、どうすんだろ?」
パパ 「鳩やんも赤松口蹄も仕事が遅いからなぁ」
ピー  「でも、外遊は早い」
パパ 「外遊だけ政治主導になっちょるね」
ピー  「閣僚が、官僚に何をどう指示すれば良いのか分からないんだね~」
パパ 「ま、日本の農業は、大規模化で生産性を向上するか、徹底した
    小規模農家の保護策しかないね」
ピー  「大規模化って必要なの?」
パパ 「外国の安い農産物に対し、コストを下げる必要があるからさ」
ピー  「輸入した方が安いから、日本の農業が問題になってくるんだね」
パパ 「農業鎖国をすればそれで済むが、そんなことは非現実的だ」
    「自給率から言って、60%の国民が餓死する」
ピー  「近代農業は、投下エネルギー1に対して0.1の収穫しか見込めない
    とか?」
パパ 「農業の石油依存だと言うんだろ」
    「エネルギー効率の問題を持ち出しても、食えなきゃ~ねぇ」
ピー  「なるほど、それが基本か」
パパ 「何よりも、非自給である60%の国民の食料確保を優先しないとね」
    「それには量も必要だし、輸入に頼るしかない」
ピー  「人間が多いの?」
パパ 「国家を維持していくには、どの国も非農業従事者が必要だよ」
ピー  「(その18)でも言っていたね」
パパ 「国民皆農だとそんなコスト計算は不要だが、日本の耕作面積から
    言って3000万人しか食えない」
    「この点から言えば、福岡正信氏の国民皆農主義は、極めて無責任
    だと思うがねぇ。9000万人を餓死に追い込む」
ピー  「そりゃー、考えものだ。原始共産主義のポルポト政権と同じになる」
パパ 「しかしね~、実は、食料自給には少子化というカラクリがあって、
    将来、日本の人口は6000万人に減少すると言う予測もある」
ピー  「ん? 自給自足が可能じゃないの?」
パパ 「可能性としてはね。大きな声では言えないが・・・」
ピー  「う~ん・・・?、それで、生産性向上の策とは?」
パパ 「大規模耕作地で、単位面積当たりの労働力投入量を下げるんだ」
    「現代版のプランテーション農業化だよ」
ピー  「日本農業のソフホーズ・コルホーズ化? それとも人民公社化?」
パパ 「ちゃう」
ピー  「あのさ、中国の大寨(だいさい)で、社会主義農業が大成功したと
    聞いていたけど、それはどうなの?」
パパ 「あぁ~、毛沢東が、農業は大寨に学べ、と言っていたスローガンね」
    「あれ嘘だったんだ。学ぶものなんか、な~んも無かったらしい」
    「中国の近代化で、そういう事が次第にバレてきたんだな~」
ピー  「なぬ?」「当時、紅衛兵が偉く自慢してたぞえ」
パパ 「人口500人程の村に、党幹部の肝いりで物凄い物資と労働力を投入
    し、あたかも大成功したように見せかけた宣伝だったんじゃよ」
ピー  「ほと、革命精神の高揚に使ったのか~。社会主義国らしいのぉ」
パパ 「はは、社会主義の非効率な農業集団化組織は機能しないからね~」
ピー  「だからどの社会主義国の農業も、失敗続きで衰退したのかぁ」
パパ 「で、プランテーション農業だが~・・・」
    「大規模工場生産方式の導入で、生産性向上とコスト削減を狙い、
    農業の国際競争力を高めようということさーね」
ピー  「農業の企業化だねぇ」
パパ 「植民地のプランテーション農業は現地人をこき使ったが、現代は
    機械化で対処する」「つまり、方式だけを取り入れるのさ」
    「それと、飼料穀物も大規模に生産し、酪農の飼料輸入量の低減を
    図り、乳製品のコスト削減も同時に行えばエエ」
ピー  「資本と労働の集約化だねぇ」「日本農業の生き残り策の一つかぁ」
    「それをどのように行うかが、赤松口蹄の役目なんだね~」
パパ 「日本で農業の大規模化を推進する場合、農地法の更なる改正が
    必要 だよ」
    「例えば、農地の売買はとても複雑で承認に時間が掛かる」
    「日本で最後の聖域市場だ。その辺りの規制緩和をする必要がある」
ピー  「農業の高コスト体質を低減するには、連続した大規模農地が必要
    なのかぁ。それを法律で可能にするんだね」
パパ 「まぁこれは、かつて英国で起こったエンクロージャーのようなもの
    だねぇ」
ピー  「エンクロージャー?。昔、社会科で習ったような・・・」
    「でもさ、農村票を囲い込んでいる小沢どんが法改正に踏切るかな?」
パパ 「その観点からすれば、無理だな」 「それに、農家の個別補償は、
    小規模農家を票に取り込む政策だからねぇ」
    「大規模化は想定外だと思える」
ピー  「日本は、小規模兼業農家が多いらしいから、物凄い票田だ」
パパ 「去年、農政の専門家と戦後日本の農地改革について話したが、
    競争力 の観点から言えば、逆行する政策だったと言っていたね」
ピー  「農業競争力の問題か~。だけど、農地改革は、日本の民主化に
    おいて は大いに貢献した政策だったと習ったよん」
    「それで、一方の小規模農家に対してはどうなん?」
パパ 「小規模農家を守るには、WTOを舞台に交渉する必要があるのだ
    けれど、 赤松口蹄に出来るかなぁ?」
ピー  「WTOって?」
パパ 「自由貿易体制を基本とする世界貿易機関だ」
ピー  「すると、農産物の関税は、WTOで交渉するんだね」
パパ 「現在、農産物の輸入は、関税が無いか若しくは低関税になっている」
    「しかし、米・小麦・乳製品については一定水準の関税を掛けている」
ピー  「どうしてそうなっているの?」
パパ 「日本の場合、小規模農家の生産性が低いから、国際競争力に劣る」
    「つまり高コスト体質なんだ。それで関税によって内外価格差を無くし
    ているのさ」
ピー  「すると、公平な競争を促すため、世界から低コスト体質への改善圧力
    と市場開放を迫られるんじゃない?」
パパ 「日本は、国土の急峻さと狭小さを理由に掲げ、WTOの市場開放圧力
    に抗している」
ピー  「その条件格差を、関税でもって是正しているのかぁ」
パパ 「そういうこと。その関税率をウルグアイ・ラウンドで、やっとこさ
    合意したんだ」「でも何時までツッパッてられるかだねぇ」
ピー  「関税を撤廃すればどうなるの?」
パパ 「国産より遥かに安い農産物が無制限に入ってくる」「しかしこれは、
    食料安保上も問題だし、第一、日本の農家が壊滅する」
ピー  「先ほどの就農者290万人が、失業者として溢れるのかな?」
パパ 「更に、食料自給率が現在の40%から12%に激減するという」
ピー  「して、日本の手立ては?」
パパ 「食料安全保障の見地から考えねばならないが、選挙の票しか頭に
    ない 小沢どん政権ではね~、'?'としか言いようが無い」
ピー  「小沢どん政権に、日本の将来を託してええのか知らん?」
パパ 「ま、WTOの農業交渉にあたり、担い手の育成、国産品の高付加
    価値化、 国際競争力強化等の構造改革を謳ってはいるがね~」
ピー  「WTOから脱退すればいいじゃん」
パパ 「そらあかん!」「日本は、貿易立国だ。食料不足60%分の輸入
    代金を 工業製品の輸出で賄っている」「それら工業製品の関税も
    WTOの舞台 で決めるから、脱退すれば貿易交渉が出来ないよ」
ピー  「そうか~、60%分の食料輸入が止まれば、人口の60%が飢え死に
    する と いうことかぁ」
パパ 「極論すればね」
    「だから、のらりくらりと交渉を継続せねばならないのさ」
ピー  「時間稼ぎだね」「ちゅーことは、日本の農業は当面現状のままだ」
    「日本の就農人口が減少するなら、おいらも農業をして見ようかな~」
    「ほら、明るい農村って言うじゃない」
パパ 「パパの友人が、明るい農村暗い付き合いと言っちょった」
    「ほほ、ピートが農村社会に溶け込めるかな~? ラブだしなぁ・・」
ピー  「おいらのようなラブラドールじゃ駄目なの?」
パパ 「いやさ、ピートの顔は、日本の農村風景にマッチしないんだよね」
    「柴犬君とか紀州犬君とかでないと」 「そーいう犬種が日本の農村に
    似合うんだよなぁ。名前も太郎とかさ」
ピー  「なんじゃそれは?」
パパ 「次回は、日本の農村社会について話そう」
ピー  「おいらが溶け込めるように頼むよ」

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