2010年5月27日木曜日

ピートとパパの会話(その102 明るい農村Ⅱ)


パパ 「前回、農業をしてみたいと言っていたね」
ピー  「ま、漠然とね。純粋に農業と言う訳じゃなくて、
    田舎暮らしもいいかな、と」
パパ 「では、’新日本紀行’から農村風景をイメージして見よう」
 http://www.youtube.com/watch?v=M7HSlonmILg&feature=related

パパ 「して、浮かんだイメージはどうかな?」
ピー  「なんともはや、古き良き日本の風景を醸し出しているメロディー
    でやんすな」
パパ 「もう一つ、’昼のいこい’のメロディーから農村社会をイメージ
    して見よう」
 http://www.youtube.com/watch?v=sLhM5AUUET4&feature=related

ピー  「の~んびりして、駅の時刻表は、普通電車が3時間に一本という
    感じだねぇ」
パパ 「ビジネスのスピードが、田舎は3時間単位、都会は30秒単位だ」
ピー  「電車の時間間隔と、その地域の経済速度は比例するの?」
パパ 「そ、田舎は3時間でビジネスの方向性を出せば良いが、都会は30秒
    で結論を求められる」
ピー  「都会はせわしないね~。慌てる乞食は貰いが少ないよ」
パパ 「駅へ行って時刻表を見れば、その地域のビジネス速度が凡そ
    把握出来るのじゃよ。これビジネス交渉の裏技ね。はは」
ピー  「時々けったいなことを言うね」
パパ 「で、農村社会のイメージは、この映像から読み取れたかい?」
ピー  「共同作業が多い映像だね~」
    「何かしら封建的なイメージで、付き合いが大変そうだな~・・」
    「でも空気は美味しそうだ・・・」
パパ 「その印象からすると、ピートは農村生活に向かないなぁ」
ピー  「なんで? 同じ日本じゃんかぁ」
パパ 「ピートが、農村は封建的だという印象を持ったからさ」
ピー  「ん? 少なくとも民主的な社会形態じゃないよね?」
パパ 「どうしてそんな事が分かるの? それは観念として思っている
    だけだろう?」
ピー  「都会ではそう言うじゃん。それ以上の事は想像でけへんし~」
パパ 「では、水田耕作中心の農村社会について、ぼちぼち話そうか」
    「まんずは、農村が封建的だと言う誤った考え方じゃが~」
ピー  「誤ってる?」
パパ 「これは、農村社会の物事の決め方を具体的に話さないと、理解
    出来ないだろうねぇ」
ピー  「例えば?」
パパ 「農村では、年間行事を例年どおりのやり方で行っていれば、先ず
    問題は出ない」「出るとすれば、何かの都合でやり方についての
    意見が食い違った場合だね」
ピー  「都会じゃ、多数決だなぁ」
パパ 「農村は、田圃と水が命の運命共同体だ」「田圃の事がうまく行か
    ねば、村落の死を意味する。争いごとは絶対避けねばならない」
    「そこで、全員が何とか納得出来るようにする。そこがポイントだ」
ピー  「どうするのさ?」
パパ 「寄り集まって、双方の意見を出来る限り述べさせる」
    「何時間か経過すると、そのうち意見が堂々巡りを始める」
ピー  「ほほう」
パパ 「そこへ、誰かがすかさず間に入り、長老に意見を仰ぐ」
    「若いもんはこない言うてござるが、どないですやろ? とね」
    「このようなやり取りが、極自然に行われる」
ピー  「長老は、多数決で賛否を取るんだろ?」
パパ 「それは都会だ。農村では、そんな下手糞なやり方はしない」
    「長老は、あくまで参考意見を述べるだけだよん」
ピー  「ふ~ん、結論を出さないんだね」
パパ 「長老は、’前はこうしたし、あそこの村はこうやってうまく
    いった。だからこうすれば良いのじゃないかい’、とたしなめる
    ように言う。けして押付けない」「で、皆さんそれで何とか納得
    する」「結局、従来どおりの方法で落着くのさ」
ピー  「よく納得するね。都会じゃ無理だな、訴訟も辞さない」
パパ 「運命共同体だからさ。地域の目的が明確だし、だから纏まる」
    「それに長老は経験豊富だから、任せても安心できるというもの」
ピー  「経験済みの従来方法が、一番安全策だと言う訳だね」
    「だから皆さん従うのかぁ」
パパ 「農村は、目的がバラバラな都会のモザイク社会とは違う」
    「都会じゃ少数意見は無視される」
    「都会人は、それを民主主義と呼ぶ」
ピー  「は~ん、田舎の寄り合いの方が、民主的な決定方法という
    訳かぁ」 「直接民主制のようだね」
パパ 「そうだよん。議会制民主主義ちゅーと、一見合理的に思えるが、
    少数意見は反映され難いという欠点を持つ」
ピー  「なるほど。社会の成り立ちが異なると言う事か」
パパ 「田舎は、田圃を守って行く共同体だから、答えは一つしかない」
    「それは、昔ながらの方法かどうかだ」
ピー  「長老は、それを心得ているのか。だから、皆さん納得するんだね」
パパ 「んだ、農村が封建的だというのは間違いで、農村を支配しようと
    する外部の勢力が、封建的体制を押付けているに過ぎない」
ピー  「ほ~ん、そいう考え方か~」「農村を支配する外部勢力とは?」
パパ 「昔で言うなら、武士階級の封建家臣団だね」
    「その時のイメージが、未だに農村は封建的だと言われる所以だと
    考えているんだ」「確かに時代と合わない部分もあるがね」
ピー  「すると、農村の良さは、運命共同体という社会組織にあるので
    あって、 自然や風景では無いということかな?」
パパ 「パパは、そうだと思っている。自然は三日で飽きる」
ピー  「ダム問題や合併問題で、村が割れている状況もあるらしいけど?」
パパ 「そういう問題は、大抵利権が絡んでいるから収拾がつかなくなる」
    「この種の問題の殆どは、外部から持ち込まれるんだ」
ピー  「年間行事どおりの事をしていれば、田舎で問題なんて起きない?」
    「すると、都会人のために田舎が迷惑しているのかぁ」
パパ 「不必要なダムを造る、ゴミ焼却施設や処分場を造る、BBQの後始末
    をしない、大声で騒ぐ、これらは全部都会人が持ち込んでくる」
ピー  「都会が田舎に干渉しなければ、明るい農村そのものなんだなぁ」
    「じゃけん、宮沢賢治は、農村に魅せられたのかぁ」
パパ 「さて、農村移住を想定して、もう少し具体的に話そうか」
ピー  「おいら、住めるかな~」
パパ 「ある都会人が、退職後に農村へ移住して自治会に入った」
    「その途端、名も知らない人の葬式に三日間付き合わされて 閉口し、
     即、自治会から脱退した」
ピー  「葬式が三日間? 凄いね。都会じゃ考えられない。それに、
    葬儀は 専門の会社に頼むのが常識になっている」
パパ 「田舎に住むんだろ?」
    「都会の常識、田舎の非常識だ」「それが軋轢を生む原因だよ」
ピー  「あ~、そうか!」
パパ 「運命共同体では、三日間の葬式なんて極当たり前なのさ~」
    「都会の町内会と同じように考えるから、大変だと思うんだよ」
    「それに、葬儀会社に頼んだりすれば、物凄い非難をされる」
ピー  「葬儀会社に頼む方が、簡単でいいじゃん?」
パパ 「田舎の葬式は、当家の親戚が集まって、飾り物を全て手作りする」
    「手作りをして亡き人を偲ぶのさ。そして、それを礼節だと考える」
ピー  「ほえ~!」「香典なんかどうなっているの?」
パパ 「香典を幾らにするかは、その家の過去帳を見て決めるのさ」
    「過去帳には、10銭とか25銭とか昔に貰った香典の額が載っている」
    「それを目安に額を決める」
ピー  「農村のデータベースだね」「しかし、10銭とか25銭とか、どのよう
    に現代の価値に換算するの?」
パパ 「それが、実に合理的な換算方法を取っている」
    「その時代の米の値段に換算して額を算出するのさ」
    「例えば、当時10銭相当の米の量が、現代なら幾らの値段に
    なるのかを見積る」
ピー  「なんと~、そういう換算をするのか。凄いね」
パパ 「農村に入るには、その辺から勉強しないと駄目だね~。ふふ」
    「誰も教えてくれないぞ~」
    「付合いが大変だと言うのは、そう言う事さ」
ピー  「色々ありそうだな~」
パパ 「それと、農村のお寺さんは、運命共同体の葬祭を執り行うから、
    敬意を払わねばならない存在なんだ」
ピー  「どのように?」
パパ 「先ず、お寺さんに電話で頼みごとをするのは、失礼にあたる」
    「直接訪問して敬意を表し、そして依頼事を話すのが礼儀なんだ」
ピー  「そうかも知れないけど、都会じゃ電話だけだねぇ」
    「他には?」
パパ 「例えば、都会のお坊さんは自ら自動車を運転して葬儀に出向くが、
    農村では送迎をせねばならない」「たとえ100mの距離でもだ」
ピー  「なんとま、歩いたほうが早い距離だ」
パパ 「それも、自動車を門前の右に着けるか左に着けるか、な~んて事
    も問題にな~る」
ピー  「左右どちらでも大差ないじゃん?」
パパ 「いやいや、敬意を払わねばならないから、問題になるのでござる」
    「実際、毎回この件で1時間以上の論議になるのが普通だ」
ピー  「町の感覚じゃ~、信じられないなぁ」
パパ 「ここでも、最終的に長老が意見を述べて収まる」
ピー  「おいら、やっぱり農村には住めないなぁ」
パパ 「それはね、地域住民と運命を共にしちょらんから、そう思うんだ」
    「農村に住むには、同じように農業をやり、村の政(まつりごと)にも
    関わる必要がある。そうすれば、何故そうなのかを理解し得る」
    「それまでは、ただの入り人だ」
パパ 「更に農村では、青年団が大きな役割を果たしているのじゃよ」
ピー  「青年団?」
パパ 「都会では廃れてしもうたが、農村では祭事を行う場合は必ず青年団
    が前面に出る」「青年団が動かないと何も出来ないくらいなんだ」
    「この組織も合理的に出来ちょるから、都会も参考にした方が良い」
ピー  「本当かい?」
パパ 「青年団の組織じゃが~、加入期間は30歳までで、その後は顧問の
    ような立場になる」「つまり、30歳で祭りごとから身を引き、実務
    や運用面を若者に譲るのさ」「そして、聞かれれば相談に乗る」
ピー  「常に組織の人員が更新されるようになっているのかぁ」
    「昨今の老害政治とはどえらい違いだねぇ」
パパ 「それに、利害関係が無いから勢力争いをする必要も無い」
    「また、青年団のお兄さん達は、若年層の教育係りも務める」
    「それによって、村の伝統や祭事が伝承されて行くのさ」
ピー  「理想的な社会システムだねぇ」「共同体を維持していくヒエラルキー
    構造が出来上がっている」「都会も見習えば良いのに」
パパ 「都会は生活様式が一様でないし、個人主義的だから無理だね」
    「しかし、農村も都会の経済が入り込み、次第に変わって来たがね」
    「ま、都会の非合理的社会と、農村の合理的社会との融合も必要だ」
ピー  「ん?、都会が非合理的?」
パパ 「農村は、経済にしろ生活にしろ無駄が無い。都会は無駄が
    多すぎる」 「但し、都会は便利だし、何でも揃っている」
ピー  「う~ん、スーパーも病院も近くにあるしねぇ。交通も便利だ」
パパ 「そういう意味からは、後期高齢者になれば都会生活の方が
    良いかも」
ピー  「そうか~、若い頃は農村に住み、歳を取ってから都会に住むという
    方法もあるねぇ」
パパ 「そうだよん。人生は多様だ」

2010年5月20日木曜日

ピートとパパの会話(その101 明るい農村Ⅰ)


パパ 「新聞に気になる記事が出ていたな~」
ピー  「最近は気になる記事ばかりだよ。それで?」
パパ 「就農人口290万人のうち、65歳以上が60%を占めているとか」
    「この290万人は、殆どが専業農家らしい。総数では780万人位かな」
ピー  「290万人と言うと、1960年当時の専業就農人口の2割だね」
パパ 「よく知っているね。問題は、現在65歳以上の人が今後10年間で
    離農して行くと言うことらしい」
ピー  「農業の現状からして、新規就農者は極僅かだろうしね」
パパ 「単純計算では、10年後の就農人口が110万人位になっちゃう」
    「政府は、食料自給率60%を目標にすると言っているが~・・さて?」
ピー  「カロリーベースで60%だろ。パパが(その18)で、カロリー値を
    後進国並に下げれば、食料自給率はもう少し上がると言っていたね」
パパ 「で、10年以内に新規就農者を増やさないと駄目なんだけどな~」
ピー  「鳩やん、どうすんだろ?」
パパ 「鳩やんも赤松口蹄も仕事が遅いからなぁ」
ピー  「でも、外遊は早い」
パパ 「外遊だけ政治主導になっちょるね」
ピー  「閣僚が、官僚に何をどう指示すれば良いのか分からないんだね~」
パパ 「ま、日本の農業は、大規模化で生産性を向上するか、徹底した
    小規模農家の保護策しかないね」
ピー  「大規模化って必要なの?」
パパ 「外国の安い農産物に対し、コストを下げる必要があるからさ」
ピー  「輸入した方が安いから、日本の農業が問題になってくるんだね」
パパ 「農業鎖国をすればそれで済むが、そんなことは非現実的だ」
    「自給率から言って、60%の国民が餓死する」
ピー  「近代農業は、投下エネルギー1に対して0.1の収穫しか見込めない
    とか?」
パパ 「農業の石油依存だと言うんだろ」
    「エネルギー効率の問題を持ち出しても、食えなきゃ~ねぇ」
ピー  「なるほど、それが基本か」
パパ 「何よりも、非自給である60%の国民の食料確保を優先しないとね」
    「それには量も必要だし、輸入に頼るしかない」
ピー  「人間が多いの?」
パパ 「国家を維持していくには、どの国も非農業従事者が必要だよ」
ピー  「(その18)でも言っていたね」
パパ 「国民皆農だとそんなコスト計算は不要だが、日本の耕作面積から
    言って3000万人しか食えない」
    「この点から言えば、福岡正信氏の国民皆農主義は、極めて無責任
    だと思うがねぇ。9000万人を餓死に追い込む」
ピー  「そりゃー、考えものだ。原始共産主義のポルポト政権と同じになる」
パパ 「しかしね~、実は、食料自給には少子化というカラクリがあって、
    将来、日本の人口は6000万人に減少すると言う予測もある」
ピー  「ん? 自給自足が可能じゃないの?」
パパ 「可能性としてはね。大きな声では言えないが・・・」
ピー  「う~ん・・・?、それで、生産性向上の策とは?」
パパ 「大規模耕作地で、単位面積当たりの労働力投入量を下げるんだ」
    「現代版のプランテーション農業化だよ」
ピー  「日本農業のソフホーズ・コルホーズ化? それとも人民公社化?」
パパ 「ちゃう」
ピー  「あのさ、中国の大寨(だいさい)で、社会主義農業が大成功したと
    聞いていたけど、それはどうなの?」
パパ 「あぁ~、毛沢東が、農業は大寨に学べ、と言っていたスローガンね」
    「あれ嘘だったんだ。学ぶものなんか、な~んも無かったらしい」
    「中国の近代化で、そういう事が次第にバレてきたんだな~」
ピー  「なぬ?」「当時、紅衛兵が偉く自慢してたぞえ」
パパ 「人口500人程の村に、党幹部の肝いりで物凄い物資と労働力を投入
    し、あたかも大成功したように見せかけた宣伝だったんじゃよ」
ピー  「ほと、革命精神の高揚に使ったのか~。社会主義国らしいのぉ」
パパ 「はは、社会主義の非効率な農業集団化組織は機能しないからね~」
ピー  「だからどの社会主義国の農業も、失敗続きで衰退したのかぁ」
パパ 「で、プランテーション農業だが~・・・」
    「大規模工場生産方式の導入で、生産性向上とコスト削減を狙い、
    農業の国際競争力を高めようということさーね」
ピー  「農業の企業化だねぇ」
パパ 「植民地のプランテーション農業は現地人をこき使ったが、現代は
    機械化で対処する」「つまり、方式だけを取り入れるのさ」
    「それと、飼料穀物も大規模に生産し、酪農の飼料輸入量の低減を
    図り、乳製品のコスト削減も同時に行えばエエ」
ピー  「資本と労働の集約化だねぇ」「日本農業の生き残り策の一つかぁ」
    「それをどのように行うかが、赤松口蹄の役目なんだね~」
パパ 「日本で農業の大規模化を推進する場合、農地法の更なる改正が
    必要 だよ」
    「例えば、農地の売買はとても複雑で承認に時間が掛かる」
    「日本で最後の聖域市場だ。その辺りの規制緩和をする必要がある」
ピー  「農業の高コスト体質を低減するには、連続した大規模農地が必要
    なのかぁ。それを法律で可能にするんだね」
パパ 「まぁこれは、かつて英国で起こったエンクロージャーのようなもの
    だねぇ」
ピー  「エンクロージャー?。昔、社会科で習ったような・・・」
    「でもさ、農村票を囲い込んでいる小沢どんが法改正に踏切るかな?」
パパ 「その観点からすれば、無理だな」 「それに、農家の個別補償は、
    小規模農家を票に取り込む政策だからねぇ」
    「大規模化は想定外だと思える」
ピー  「日本は、小規模兼業農家が多いらしいから、物凄い票田だ」
パパ 「去年、農政の専門家と戦後日本の農地改革について話したが、
    競争力 の観点から言えば、逆行する政策だったと言っていたね」
ピー  「農業競争力の問題か~。だけど、農地改革は、日本の民主化に
    おいて は大いに貢献した政策だったと習ったよん」
    「それで、一方の小規模農家に対してはどうなん?」
パパ 「小規模農家を守るには、WTOを舞台に交渉する必要があるのだ
    けれど、 赤松口蹄に出来るかなぁ?」
ピー  「WTOって?」
パパ 「自由貿易体制を基本とする世界貿易機関だ」
ピー  「すると、農産物の関税は、WTOで交渉するんだね」
パパ 「現在、農産物の輸入は、関税が無いか若しくは低関税になっている」
    「しかし、米・小麦・乳製品については一定水準の関税を掛けている」
ピー  「どうしてそうなっているの?」
パパ 「日本の場合、小規模農家の生産性が低いから、国際競争力に劣る」
    「つまり高コスト体質なんだ。それで関税によって内外価格差を無くし
    ているのさ」
ピー  「すると、公平な競争を促すため、世界から低コスト体質への改善圧力
    と市場開放を迫られるんじゃない?」
パパ 「日本は、国土の急峻さと狭小さを理由に掲げ、WTOの市場開放圧力
    に抗している」
ピー  「その条件格差を、関税でもって是正しているのかぁ」
パパ 「そういうこと。その関税率をウルグアイ・ラウンドで、やっとこさ
    合意したんだ」「でも何時までツッパッてられるかだねぇ」
ピー  「関税を撤廃すればどうなるの?」
パパ 「国産より遥かに安い農産物が無制限に入ってくる」「しかしこれは、
    食料安保上も問題だし、第一、日本の農家が壊滅する」
ピー  「先ほどの就農者290万人が、失業者として溢れるのかな?」
パパ 「更に、食料自給率が現在の40%から12%に激減するという」
ピー  「して、日本の手立ては?」
パパ 「食料安全保障の見地から考えねばならないが、選挙の票しか頭に
    ない 小沢どん政権ではね~、'?'としか言いようが無い」
ピー  「小沢どん政権に、日本の将来を託してええのか知らん?」
パパ 「ま、WTOの農業交渉にあたり、担い手の育成、国産品の高付加
    価値化、 国際競争力強化等の構造改革を謳ってはいるがね~」
ピー  「WTOから脱退すればいいじゃん」
パパ 「そらあかん!」「日本は、貿易立国だ。食料不足60%分の輸入
    代金を 工業製品の輸出で賄っている」「それら工業製品の関税も
    WTOの舞台 で決めるから、脱退すれば貿易交渉が出来ないよ」
ピー  「そうか~、60%分の食料輸入が止まれば、人口の60%が飢え死に
    する と いうことかぁ」
パパ 「極論すればね」
    「だから、のらりくらりと交渉を継続せねばならないのさ」
ピー  「時間稼ぎだね」「ちゅーことは、日本の農業は当面現状のままだ」
    「日本の就農人口が減少するなら、おいらも農業をして見ようかな~」
    「ほら、明るい農村って言うじゃない」
パパ 「パパの友人が、明るい農村暗い付き合いと言っちょった」
    「ほほ、ピートが農村社会に溶け込めるかな~? ラブだしなぁ・・」
ピー  「おいらのようなラブラドールじゃ駄目なの?」
パパ 「いやさ、ピートの顔は、日本の農村風景にマッチしないんだよね」
    「柴犬君とか紀州犬君とかでないと」 「そーいう犬種が日本の農村に
    似合うんだよなぁ。名前も太郎とかさ」
ピー  「なんじゃそれは?」
パパ 「次回は、日本の農村社会について話そう」
ピー  「おいらが溶け込めるように頼むよ」

2010年5月12日水曜日

ピートとパパの会話(その100 Three Dog Night)


パパ 「昨日、ワシが昼寝をしておったら、勝手に入り込んできたろう」
ピー  「雨の日は昼寝に限るけんね」
    「上の写真、パパとおいらと、他にも二つの顔が見えちょるね?」
パパ 「この写真から、ある音楽を連想してみよう~? 分かるかな。ふふ」
ピー  「子守唄かい?」
パパ 「この状態をThree Dog Nightと言う」
ピー  「Three Dog Night??、意味不明じゃねぇ」
パパ 「オーストラリアの原住民、アボリジニの風習で、寒い夜は三匹の
    犬と寝れば暖かいという意味じゃ」
    「で、上の写真は、それを体現した状態であ~る」
ピー  「いつもの如く訳が分からんが~・・・」
    「Dogが複数形になっちょらんぜよ」
パパ 「細かいことはよろしい」
ピー  「して、音楽との関係は?」
パパ 「バテレンのロックグループが、このThree Dog Nightという風習を
    自分達のバンド名にしたんだ」「命名の経緯は不明じゃ」
ピー  「文字を並べただけで、熟語にも何にもなっとらんね」
    「ま、おいら達の体温は38度だから、くっつくと温かいんだろうね」
パパ 「このThree Dog Nightをエスキモーの風習だと言っている人も
    いるが、 これは間違いで、正しくはアボリジニの風習だよ」
ピー  「ほんで、どんな音楽なの?」
パパ 「では、アメリカのロックバンドThree Dog Nightの曲を聴いてみよう」
    「1970年にビルボード1位となったママ・トールド・ミーだ」


   
     「続いてオールド・ファンションド・ラブ・ソング」


ピー  「ほほう、訳のわからん昼寝が音楽に結びついちょーる」
パパ 「キャンプ好きの人は、一度Three Dog Nightをやってみると、
    その暖かさが分かるよ。ヒヒ」     

2010年5月8日土曜日

ピートとパパの会話(その99 教育と組合Ⅳ)


パパ 「さて、教育と組合の続きをやろうか」
ピー  「それより鳩やんの沖縄は大丈夫なんかいな?」
パパ 「いやはや何とも・・」
    「それで~、先生の組合じゃが~」
ピー  「その前にさ、どうして日本の子供の学力が低下してきたの?」
パパ 「うーん、どうしてだろうねぇ?」
    「では、公立の小中高に焦点を当てて考えて見よう」
ピー  「その鍵は、公立学校にあるの?」
パパ 「パパと(その89)で労働価値説の話をしたよね」
ピー  「ああ、先生の組合が、教職というのも一般労働者と同じ立場で
    あ~る、と定義付けた内容だったね」
パパ 「おっ、ちゃんと覚えてるね」「これが~、学力低下の一つの要因
    かも知れない、とパパは考えちょ~るのよ」
ピー  「ん?、先生の組合と学力低下の関係・・?」
パパ 「あんね~、学力を向上さす教育は、労働強化に繋がるんだ」
    「どこかの国有鉄道の組合と同じような考え方ざんす」
ピー  「ん?、生徒の学力を向上さすのが、先生の役目なんだろう?」
パパ 「それと、お上の言う学力向上は、大資本に奉仕するものだという
    考え方が先に立つんじゃないかと。イデオロギーから言ってね」
ピー  「まーた、イデオロギーかい」
パパ 「先生の組合は~、階級闘争と権利主張を表明しているからねぇ」
    「だから、どうしてもそちらの意識が強くなるんじゃないかなぁ」
    「お上からの学力向上というお達し教育は、まかりならん。とね」
ピー  「それって推測の域?」
パパ 「先生の組合は、この労働強化とイデオロギーの観点から、
    学力向上教育にクエスチョンだったんじゃないかな~・・と」 
ピー  「それが内実?」「それで子供の学力が低下したと?」
パパ 「極端な言い方をすれば、公立学校の先生は、職務が適当でも
    給料は保障されているときたもんだ」
ピー  「その言い方は、根拠が不明確で客観性に欠ける」
パパ 「しかし、教育に一生懸命取り組んでいる先生がいるのも事実だ」
    「そういう先生は、組合と一線を画している」
ピー  「ははぁ~、組合の組織率に関係してくるね」
    「先生の組合方針は、世間の実情と合わなくなってきたのかな?」
パパ 「んで、学力低下を恐れた父兄は、子供を私立学校へ通わすことに
    したんだ」「これは、1980年から実施されたゆとり教育に符合する
    動きだ」「ま、進学校の誇張宣伝も無きにしも非ずだが・・」
ピー  「どうしてまた私学に?」
パパ 「私学だから、校内暴力なんかも徹底的に排除されるし、何よりも
    教育を受ける権利が阻害されない」
ピー  「ほほう、生徒による授業妨害も無い?」
パパ 「それに私学は民間経営だから、現実に沿った教育内容だよ」
    「但し、私学によっては成績優先だから、体育会系のクラブ活動を
    あまり推奨しないところもある」
ピー  「それは問題だね。つまり、猛烈な進学校化で生徒を集めるんだ」
パパ 「しかし、私学の先生は、実績を要求されるから大変なんだよん」
    「身分保障が、公立学校の先生と根本的に違う」
ピー  「ほと、公立学校の学力は益々低下し、私学の学力は向上する?」
パパ 「んだ、その頃から私学の中高一貫教育の人気が高まったんだ」
    「何故なら、高校受験が無い分、ゆとり教育も可能だし、進学する
    上での充分な勉強時間も取れるということさーね」
ピー  「なるほどね~」
    「最近、公立で中高一貫の実験校を作ったのも、そのためか~」
    「私学では、幼稚園から大学までエスカレーター式ってのもあるね」
パパ 「んだんだ」
ピー  「ほと、先生の組合が主張している受験競争を排除してこそ、ゆとり
    教育が可能だという論理を証明したようなものじゃない?」
パパ 「そうだね~、古臭いイデオロギーを排除すれば、先生の組合が言っ
    ていることは、基本的に正しいと認識し得る」
ピー  「だろう、おいらはそういう気がするけどね~」
パパ 「しかし、公立の中高一貫校であっても、学力向上を目指す以上、
    それは受験のための学校だね~」
ピー  「公立学校が私立学校と競争するの~?」
パパ 「だけどね~、私立進学校の場合、教育進度は公立より1年先を
    走っているんだな~」
    「高校2年で全ての学科を終了し、最終年は受験勉強に専念する」
ピー  「なんとまあ」
パパ 「その現実に、普通の公立学校の先生が耐えられるかどうかだ」
    「結果を求められるから、凄い労働強化になるよ」
    「謂わば、公立の教育現場に成果主義を取り入れるのに等しい」
ピー  「そりゃ~、先生の組合方針では、とても無理じゃわね~」
パパ 「しかも、文部科学省の指導要領では、私学と競争するのは難しい」
    「例えば、公立の小6は方程式を教えないが、進学塾では教える」
ピー  「フェアじゃないねー」
パパ 「事実、私学の中学受験では、算数の問題を皆が方程式を使って解い
    ているよ」「解への到達時間が短縮できるからさ」
    「悲しいかな、それが現実なんだな~」「それに、私学によっては
    土曜日も授業がある」
ピー  「おっそろしいな~」
パパ 「教育の規制緩和を行うと、物凄く伸びる生徒が出てくるのも事実だ」
ピー  「それで一部の公立学校では、塾の先生を招いて学力向上の教育
    方法 を学んでいるのかぁ」
    「その分、教育格差も出てくるんじゃない?」
パパ 「その教育格差をどうするかは、実は政治経済の問題なんだなぁ」
ピー  「でも何か矛盾を感じる」
パパ 「で、文部科学省も指導要領の見直しを始めたんだが・・・」
    「円周率を再び3.14で計算するとか、小学校低学年での社会と理科を
    再分離するとかさ」
ピー  「もし、先生の組合が受験競争は駄目だと言うなら、社会の仕組みを
    変えることから始めなければならないということかねぇ~・・」
パパ 「そうだよん、先生の組合は、その仕組みを社会主義化という概念で
    捉えているのさ」
ピー  「どうして社会主義の教育が良いの?」
パパ 「社会主義は、全てが平等という考え方だ。競争する必要が無い」
ピー  「いいじゃんか~。本来のゆとり教育が行える」
パパ 「それが迷信なのさ~」「前橋汀子が留学先のソ連で、この国で
    落ちこぼれると生きていけない、と言っていたじゃないか」
ピー  「おえ! 資本主義よりも厳しい競争社会だ」「だからソ連は、国際
    音楽コンクールで上位を占めることが出来たのかぁ。必死なんだ」
パパ 「そうだよ~、学力の向上を目指すには、どうしても競争が必要なん
    だなぁ」「だから、ゆとり教育の見直しが始まったんだわさ」
    「特に経済のグローバル化以降、それが顕著になってきたようだ」
ピー  「う~ん、教育問題の本質は、経済問題?」
パパ 「であれば、政治がそれを解決しないとね」
    「先生の組合も国歌・国旗に反対しているうちに、世の中から置いて
    きぼりにされちゃうぞ~」
ピー  「すると、先生の組合が提唱し、中教審の答申で文部科学省が推進
    してきたゆとり教育や絶対評価も、あまり意味が無くなってきたの
    かなぁ」
パパ 「何れにしろ教育は、国家の根幹だよ」
    「他にも重要な教育要素があるんだが~、またの機会に話そう」