2011年6月24日金曜日

ピートとパパの会話(その124 Roll Over Beethoven)


(Photo by Kentucky Educational Television)

ピー  「前回、Roll Over Beethovenがどうとか言っていたね」
パパ 「鬱陶しく蒸し暑い梅雨をブッ飛ばそうってのが、今回の趣旨じゃ」
ピー  「それが、Roll Over Beethovenかい?」
    「して、ベートーヴェンとどういう関係?」
パパ 「Roll Over Beethovenとはだね~、直訳をコネクリ々倒すと、
    ベートーヴェンなんかブッ飛ばせ、ちゅーことでござろーな」
ピー  「・・?、 意味不明でやんすな」
パパ 「とにかくRoll Overなんじゃよ」
ピー  「再び意味不明でござる」
パパ 「Roll Over Beethovenは、チャック・ベリーの楽曲で、1956年に
    発表されたロックン・ロールだよん」
ピー  「あ~ぁ、ロックでも聴いて梅雨の鬱陶しさをブッ飛ばそうと?」
パパ 「さいでござる」
ピー  「でもさ、何故ベートーヴェンなん? 再度しつも~ん!」
パパ 「あのね、えーと、米国は1955年~56年にかけて、キング牧師
    率いる公民権運動が高まりをみせ、特にローザ・パークス事件
    を切っ掛けに、黒人の人権闘争が過激になってきた時期
    じゃった。ということから話していこう」
ピー  「ローザ・パークス事件?」
パパ 「興味があるなら調べてみるといいよ。この事件の最高裁判決が
    注目を受け、その後の公民権運動に大きな影響を与えた」
ピー 「ほんでベートーヴェンは?」
パパ 「ベートーヴェンは、古典派の象徴だ。音楽界の超体制的存在ね」
ピー  「は~ん、つまり、ベートーヴェンをブッ飛ばすということは、
    黒人を支配している体制をブッ飛ばすということかぁ」
パパ 「んだ。誰も言わないが、チャック・ベリーは公民権運動に
    ベートーヴェンを引っ掛けたんだ、と、パパは思っている」
ピー  「ほっほう~、パパの米国史観?」
パパ 「じゃがの、チャク・ベリーは少々ベートヴェンを誤解している
    というか、勉強不足だ。音楽的にもフランス革命の影響を受け
    ていたことを見逃している」
ピー  「ややこしい話になってきたばい。ほんで?」
パパ 「チャック・ベリーは歌詞の中で、ベートヴェンあかん、R&B最高、
    ブルース最高と言っておーる」「R&Bもブルースも黒人音楽だ」
ピー  「ほと、ベートーヴェン=白人の支配体制 対 R&B,ブルース=黒人
    という構図かい?」
パパ 「そうだ。これは黒人の隠された革命歌なんじゃよ」
ピー  「ふ~む、深読みし過ぎじゃのぉ~・・・」
パパ 「では、チャック・ベリーの元祖Roll Over Beethovenを聴こう」
    「おっと、途中でチャック・ベリーがダックウォークを始めるから
    よく見てみよう」
ピー  「ダックウォーク?」
パパ 「ギターを弾きながら腰を落とし、片足を伸ばしてピョンコ
    ピョンコと歩くんだ」

http://www.youtube.com/watch?v=gsp4VCbVvn4&feature=related

ピー  「ほう、これがダックウォークか」
パパ 「ワシもやってみたが、どえらい脚力が必要だ」「2,3歩で進めなく
    なる」
ピー  「え~っ! 実際にやってみた~。アホちゃう」
パパ 「何事も経験だ」
    「まあしかし、この芸風は宮川左近ショーと同じだな」
ピー  「ほえ? マイドオ~ で始まるあれかい?」



パパ 「ほんじゃー、宮川左近ショーを見てみよう」
    「松島一夫のギター回しは、チャック・ベリーと同じじゃけんね」

http://www.youtube.com/watch?v=SXVUlQ1tygc&feature=related

ピー  「宮川左近ショーと同列に論ずるのは、チャック・ベリーが
    可愛そうだよ」
パパ 「同じエンターテナーじゃんか。何の違いがあろうか、ピート君」
ピー  「おいらとは、意見の相違があるでござるな」
パパ 「で、Roll Over Beethovenをカヴァーしたのがビートルズだ。
    それでは辛抱して下手糞なカブト虫という楽隊屋を聴こう」

http://www.youtube.com/watch?v=tE6Vwn5H09c&feature=related

ピー  「おいらはこちらの方がいいや」




パパ 「時代は進み、60年代後半からシンセサイザーを使ったグループが
    出現してくる」「ELOというグループが、Roll Over Beethovenの
    カヴァーをやったんだ。聴いてみるかい?」
ピー  「ん? シンセサイザー? YMOじゃないの?」
パパ 「ちゃう。YMOは、ELOのコピー版のようなもので規模も小さい」
    「ELOはElectric Light Orchestraというんだが、ビートルズより
    ずっと現代的で洗練されている」
ピー  「ほほう」
パパ 「さて、ELOのRoll Over Beethovenは、文字どおりベートーヴェンの
    第五を前奏にもってきて、しかもストリングスを使っている」
    「ま、エレクトリック・チェロなんだけどね」「ではいってみよう」

http://www.youtube.com/watch?v=HgcKhqlFz4Q&feature=related

ピー  「はぁ、オーケストラに近い演奏形態だね。随所に第五の変奏が出て
    くる。寺内タケシもエレキでやっていたんじゃない?」
パパ 「お寺内氏の演奏に比べると、ELOは癖が無く旋律が滑らかだよ」
    「これは、ストリングスの効果だね」
ピー  「違和感なく第五とチャック・ベリーが融合しているね」
パパ 「しかし、これはロックン・ロールだ。小太鼓は由緒正しい
    伝統のリズムを刻んでいるし、鍵盤はブギ調でウキウキする」
ピー  「由緒正しいロックン・ロールね~」
パパ 「そうだよん。以前、アルバート・リーの話をしたろう。あれだ」
ピー  「そうか、小太鼓があの時と同じリズムを刻んでいるね」
パパ 「ロックン・ロールは、ブギウギ、R&B、ゴスペルといった
    黒人音楽を基調としているから、音楽の中にそれらの痕跡を
    見出すことができる」
ピー  「ほう、ただ浮かれているだけの若者音楽だと思っていた」
パパ 「60年代後半を境に、ロックン・ロールはエレクトリックサウンド
    へと進化して行くんだ」
ピー  「シンセサイザーとか、コンプとかリミッターとかだろう?」
パパ 「それは代表的なものだけだ。他方、幻想的なサウンドで演奏する
    サイケデリック・ロックなんちゅーのも、この頃に出てくる」
ピー  「サイケデリック?」
パパ 「LSDでラリってる時に見える幻想的な色彩感のことをいう」
ピー  「なんじゃそれは、おいらの守備範囲を越えている」
パパ 「これ以降、ロックン・ロールは単にロックと呼ばれるようになる」
    「うんじゃ手始めに、ワウを使ったエレクトリックギターを聴こう」
    「シカゴの午前4時25、6分前という曲だ。日本では'長い夜'
    という曲名だよん」
ピー  「午前4時25、6分前というと、午前3時35分頃だね?」
パパ 「そう、その時間に作曲したらしい」
ピー  「粋な曲名だ」

http://www.youtube.com/watch?v=WLiuMkGCOC4

ピー  「ワウちゅーのは、ギター音をワウワウと震わす装置のことだな」
パパ 「Yes. この音が堪らんのじゃよ~」
ピー  「あたま大丈夫かい?」
パパ 「続いてサイケデリック・ロックのバニラ・ファッジを聴こうと
    思うんじゃが、長くなるから止めとこう」
ピー  「ところで、どうしてロックが好きなの?」
パパ 「好きじゃなくて、違和感を感じないだけだよ」
    「ただね、皆さん歳を重ねると、カラオケで演歌ばかり歌うように
     なるのは何故だろうと考えるね」
ピー 「若い頃は、ロックも聴いていたのか知らん?」
パパ 「次回は、その辺りを考察してみよう」
ピー  「しかし、ロックは民謡のように一本調子だから疲れるばい」
パパ 「じゃ、最後にドイツ ゲヴァントハウス弦楽四重奏団の演奏で、
    モーツァルトの弦楽四重奏曲第19番を聴き、精神を癒そう」

http://www.youtube.com/watch?v=6Zcy-zs9jmw&NR=1&feature=fvwp

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