ピー 「最近、政治の話をしないね」
パパ 「馬鹿馬鹿しいからね~。ま、そのうちやるよん」
「今日は、里山の話だ」
ピー 「お~、昔懐かしい里山物語か」
パパ 「それが、猿害の話なのじゃよ」
ピー 「猿害? 猿蟹合戦かい?」
パパ 「ちゃう、猿が山から下りてきて農作物を食い荒らす話だ」
「定年退職して里山暮らしを夢見ている人は、再考した
方がエエ」
ピー 「何のことかわーらんが、食い荒らしはかなわんなぁ」
パパ 「里山近くにある田畑は、猿害で今や壊滅状態だ」
「皆さん猿の進入を電気柵で防御しているが、広大な面積の
田畑や、逆に狭いところも収穫量対防御コストの関係で
大変らしい」
ピー 「ほと、定年組の家庭菜園なんかも猿害に遭うんだね」
パパ 「そ、分け隔てなくね」
ピー 「ほう、それでパパは、里山暮らしに否定的なのか~」
パパ 「じゃけん、猿害で菜園を諦めた人も出てきた」
「里山近辺での農的生活なんて、夢物語になりつつある」
「家庭菜園や果樹を育てなければ問題ないと思うがね」
ピー 「折角夢を描いて里山暮らしを始めたのに、猿のために
ワヤクチャなんやねぇ」
パパ 「葉物や根菜類、ジャガイモにサツマイモ、球根までも
掘って食べ漁る。実に卑しい」「それも喰い散らかしだ」
ピー 「お行儀の悪いお隣の国のようだ」
パパ 「最近、ブルーベリーも目を付けられ、収穫量が随分と
減った」「それも木に乗って食い漁るから、枝が折れ
ちまうんだなぁ」
ピー 「すると、柿とかの果樹類も駄目だね」
パパ 「里山は諦めた方がエエ。住むなら猿が来ない町か、山
から離れた平野部だね。そこでなら家庭菜園も楽しめる」
ピー 「追っ払う方法は無いの?」
パパ 「爆竹やパチンコで追っ払っても、また来るとか」
ピー 「猿が馴れるんだな~」
「で~、今日の事態に至った原因は?」
パパ 「諸説あるんだが、よく解らないというのが実態だ」
「自然破壊や木の実の減少だと言われているが、最も自然
破壊が激しかった60~70年代でも、今日ほど猿害は酷く
なかった」
ピー 「ほ~ん。木の実の減少は?」
パパ 「山の食糧事情が悪化する現象は、自然のサイクルとして
過去にも繰返されているが、猿害に結び付くような問題も
なかった」
ピー 「結局原因が不明なのかぁ」
パパ 「少し考察すると、先ず猿害が起こり始めたのが、約10年位
前からだ」
ピー 「すると、それ以前の状況にまで遡って考えねば、今日に
至った原因が解らないということかぁ」
パパ 「では、凶暴で有名な大津E群という猿の集団を見てみよう」
「この集団には、平成9年まで地元の観光業者や社寺によって、
餌付けが行われていた」
ピー 「またどうして餌付けなんか?」
パパ 「観光目的だ」
ピー 「それが猿害に?」
パパ 「当初猿は、観光客等が与える餌に集まっていたんだよ」
「それがだ、観光客から餌を貰えないと、催促して悪さをする
ようになった」「人間を怖がらなくなったんだよ」
ピー 「猿は厚かましいな! おいら達はお座りして待っているのに」
パパ 「更に、観光客を引っ掻いたりして被害が出るようになったの
じゃよ。それと、地元の畑が荒らされるようになってきた」
ピー 「そらあかん」
パパ 「んで、餌やりは、もう止めようということになったんじゃ」
「ほと、餌が貰えない大津E群は、地元の農作物を益々食い
漁るようになった」
ピー 「ふ~ん、それが原因なの?」
パパ 「ま、主たる原因かも知れない」「それに、猿の方も餌付けで
人間に馴れちまって、我々の領域を侵すようになってきた」
ピー 「おいら達も人間に馴れちまっているけど、それは共生だ」
パパ 「問題なのは、観光目的で自然の命を売り物にしたことだなぁ」
ピー 「猿は、おいら達のように飼い慣らしが出来ない?」
パパ 「ま~ね、猿回しぐらいのものだなぁ」
ピー 「常にリードで繋いじょるのは、逃げるからか」
パパ 「猿は、人間との共生能力が犬よりも遥かに劣る」
ピー 「もしかして猿害は、自然保護が影響しているとか?」
パパ 「そういう考えもあるが、日本の自然保護運動はそんなに
規模も大きくないし、全国の猿の生態を変えるほど影響を
及ぼしているとは考え難い」「やはり餌付けが原因だろうね」
ピー 「そういう因果関係か~」「ところで、鹿や猪はどうなのさ」
パパ 「こちらの被害も甚大だ」「鹿や猪が増えたのは、ハンターの
減少だという人もいる」
ピー 「そういやー昔、食料確保としての狩猟があったね」
「おいら達も猟に駆り出された」
パパ 「そうそう、元々犬は仕事を持っていたし、放し飼いだった」
「それが何時しか可愛いというだけのキュートレスポンスに
変わり、ペットとして飼われるようになったのじゃよ」
ピー 「キュートレスポンスね~。何か違和感があるなぁ」
パパ 「んでじゃ、途中から放し飼いは危険だということになって、
犬達はリードに繋がれる事になった次第なんじゃが~・・」
ピー 「おいら達が放し飼いの頃は、里でも動物による食害が少な
かったんじゃないかい?」
パパ 「んだ。ピート達が猿や鹿を追い回していたから、田畑への
被害も少なかったし、動物も山から下りて来なかった」
「それに、田畑で働く人の数も多かったし、迂闊に出てくると
人間に食われちまうからね。今は、その心配が殆どない」
ピー 「その頃は、数の自然淘汰も働いていたのだろうね~」
パパ 「反面、猿や他の動物が、人間の田畑から食料を得ると、
食物の量から言って、その数が無制限に増えてくる」
「その原因を作ったのが、人間の餌付けじゃよ」
ピー 「ほほ、マルサスの人口論だ」「で、増えた分だけ駆除する
必要が出てきたのか。なんだか動物に責任を押付けてる
感じがするなぁ」
パパ 「餌付けは、これはもう重機を使わない自然破壊だねぇ」
「人間世界と動物世界のバランスが狂っちまう」
ピー 「そして、追われた猿や動物は、別の田畑に被害をもたら
すんだね」
パパ 「そうだよん、例えば人間の作る食料の甘味を知った猿は、
何処へ行っても田畑の食料を食い尽くす」
「ほんで、対策としてモンキードッグを育てよう、となる」
ピー 「ほっほう、ここからが、おいら達の出番だな」
パパ 「じゃが、ポイントは放し飼いにある」
「ラブの24時間警備保障だ。耐えられるかい?」
ピー 「なるほど、おいら達が出動したときは逃げて、引揚げれ
ば出てくる訳だ。だから24時間の放し飼いが必要なのか」
パパ 「毛沢東の言う、人民戦争の原理じゃよ」
ピー 「なんじゃそれは?」
パパ 「じゃけんね、どうしても里山で家庭菜園をするなら、田畑
を柵で囲って、犬を放し飼いにしておくんだ」
ピー 「夜もかい?」
パパ 「そう夜も。いわゆる外飼いだ。日本古来の犬の飼い方だよ」
「それも、日本の野生動物に適した昔の赤犬のような犬種
がエエ」「よく吠えるように改良された犬種ね」
ピー 「番犬かぁ。キュートレスポンスは何処へ行ったんじゃ?」
パパ 「そんな感情は無い。田畑を守るのが、赤犬達の役目だ」
「その代わり食料は保証される」
ピー 「外飼いなら、おいらは里山近辺に住みたくないね」
パパ 「大体ピート達の犬相は、日本の里山に似合わないよ」
「ピート達は西洋の顔付きだし、洋風の牧場とかが似合う」
ピー 「似合う似合わないの問題かね~?」
パパ 「ほんで、里山暮らしの大変さが解ったかい?」
ピー 「いつもながら講釈が多い」